OCTの拡大率補正をした方が良い時とそうでない時【視能訓練士 上級】

こんにちは、ひらちゃんPhDです。

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今回のお勉強の内容は、OCTを撮像するときに拡大率補正が必要な時とそうでない時を解説したいと思います。

結論を先に言いますと

正常データと比較する時と被験者間を比較する特は必要ですが、10-2の測定点との相関を調べる時などは補正してはいけません

また日々の臨床で同一患者の経過観察をするときは必要ないと思います。

今回の記事ではこれらの理由についてお話しします。

それでは宜しくお願い致します。

OCTの拡大率補正をした方が良い時?

皆さん眼底写真かOCTを撮ったことはありますか?

その時に人によって少し大きく写っていたり、少し小さく写っているなと感じたことはありませんか?

勿論、人間の背丈に差があるように、視神経乳頭や血管にも差があるのですが、大体同じ大きさをしています。

ではなぜ大きさが違って見えるのでしょうか?

それはカメラの画角が一定なので、距離が変わると長さが変わってしまうからです。

眼底カメラは模型眼(だいたい24mmの眼)の撮像を想定して設計されています。

そのため、模型眼のように24mmくらいの眼であれば、想定した範囲を写すことができます。

その一方で、眼の長さすなわちカメラからの距離が違うと写る長さが変わります。

例えば骨付きの肉の肉の部分だけを写すとします。

模型眼に近い24mmの場合、お肉だけ綺麗に写せますが、距離が近いとはみ出てしまいますし、距離が遠いと肉以外に骨まで写ってしまいます。

この撮った画像を同じ大きさのフレームに納めたら大きさが変わってしまいますよね?

すなわち、長眼軸眼(距離が遠い)では小さく写ってしまい、単眼軸眼(距離が近い)では大きく写ってしまいます。

これが拡大率による画像の大きさの違いです。

スマホで写真撮るときも一緒です。

拡大縮小せずに最初の状態で遠くの物を撮ると、実際の大きさより小さく写りますよね。

実は拡大率は身近で体験しているのです。

補正するって何?

眼底写真だけであれば、縮小されて写ろうが拡大されて写ろうが問題ありません。

何故なら目に見える病態が眼底にあるか否かを見るだけだからです。

その一方で、OCTはちょっと厄介になってきます。

何故だか分かりますか?

視神経乳頭の神経線維(cpRNFL)の厚みも黄斑部の神経節細胞(GCL)の厚みも、全員模型眼を想定して同じ領域を解析するからです。

直径 3.4mm を計測する cpRNFL を例にとってみましょう。

先ほども説明しましたが、単眼軸眼では大きく写り、長眼軸眼では小さく写ってしまいます。

全員同じ条件の直径 3.4mm の円で解析すると、単眼軸眼では乳頭に近い領域、長眼軸眼では乳より遠い領域を計測することになります。

なぜこれが厄介かと言うと、cpRNFLは乳頭に近い程線維が密になっているので厚く、遠い程放射状に走行しているので薄くなっています。

つまり、単眼軸眼では厚めに計測され、長眼軸眼では薄く計測されてしまうのです。

画像の拡大や縮小に合わせて解析エリアも補正して、全員同じ条件で解析する事を拡大率を補正すると言います

実際に補正するとこのようになります。

単眼軸眼では通常撮像より計測範囲が広くなったので薄くなり、長眼軸眼では通常撮像より計測範囲が狭くなったので厚くなったのが分かると思います。

拡大率を補正することによって、理論的に全員同等の領域を解析することになりますね

これは黄斑部の計測の時にも全く同じ事が言えます。

どうやって補正するの?

雰囲気で解析領域や画角を変えているのではありません。

難しい補正式によって補正されるていますが、眼軸・屈折値・角膜曲率を OCT の機械の中に入力すれば補正できます。

方法によっては眼軸だけでも補正できます。

代表的な補正式は、BennettLittmann の補正式です。

OCTの機種によっては、撮像前に眼のデータを入れ撮像時に画角を補正する場合と、撮像は全員同じ画角ですが解析する画面で補正する場合と2つに分かれています。

研究で使用する場合は後者の機種の方が優れています。

何故なら今回のお題にもなっていますが、拡大率補正が必要ないときは補正していないデータも使用できるからです。

解析画面で補正ありと補正なしを操作できる方が便利です。

撮像時に画角を補正してしまうと、その画像は元に戻せないので、補正したデータしか得られません。

拡大率補正した方が良い場合

本当は全員眼軸を測って補正した方が理論的に正確な値が計測されますが、実際の外来では必要ないと思います。

何故なら、緑内障患者さんの cpRNFL および GCL の計測は正常値との比較ではなく、経時的な変化を診ているからです。

同じ条件で撮りつ付けていれば拡大率はあまり関係ないですね。

しかし、研究においてある群とある群の cpRNFL 又は GCL の厚みを比較する場合は拡大率補正は必須となります。

補正をしているか否かで論文の reject の対象にもなります。

同じ条件下で比較しないと拡大率の影響で真の値が曖昧になってしまいますからね。

研究目的で計測する場合は補正した方が良いですね。

拡大率補正をしてはいけない場合

研究と言っても拡大率補正をすることによって逆に不正確になることがあります。

それは、黄斑部のOCTデータと視野の10-2の各測定点の相関を調べる時です。

何故だかわかりますか?鋭い方は気づいているかもしれません。

それは、視野の測定点は拡大率補正をしていない(できない)からです。

OCTは拡大率補正をし、視野は補正をしていないとなると、網膜の対応点がズレてしまいますよね。

長眼軸眼において、通常撮像した時(左)と拡大率補正をした時(右)を図示するとこんな感じです。

単眼軸眼では上記の写真とは反対の現象が起きます。

マス目ごとのGCLの厚みと10-2の各視野の測定点がズレてしまいますね。

ETDRSチャートや他の円形のチャートでも同じです。

何でもかんでも拡大率を補正すれば理論的に正確な値になるわけではないんですね。

しかし、現在ではドームに投影するタイプの視野計の他に、眼底投影視野計の精度が高くなってきたので、視野計でも拡大率が補正できるようになると思います。

それによって、より正確な網膜の構造と機能の関係が調べられるようになりますね。

さいごに

今日は少し深いところの内容でした。

久々に学術的な記事を作っていたら、以前学生に講義するために夜な夜なスライドを作っていたのを思い出しました。

自分の知識の整理にもなるので良いですね!

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