留学ということ語学留学、研究留学、筋肉留学など様々な種類がありますよね。
留学って響きは比較的プラスのイメージがあると思います。
ただ実際にはお金もかかるし、簡単に行けるものではありません。
僕は超高倍率の留学助成金を運よく勝ち取り、2年間のイギリスロンドンへ留学を体験しました。
その後ポスドクとしてカナダで研究者として働き、もう一回イギリスロンドンで国際共同研究の留学を体験しました。
今回お話ししようと考えているのは最初にイギリスロンドンに留学した時の「留学の流れ」に関するお話しです。
今記事がぴったりな方
・留学をしてみたい方
・留学はしたいけどお金がない方
留学助成金の申請の前に留学先を決めるのが先
当たり前ですが、留学先と留学期間が決まっていないと、留学助成金に
予めスカイプ面接をして留学先の教授の承諾
僕は日本でポスドクをしていた時の上司が以前に6年間所属していたところに留学させて頂きました。
僕の上司と留学先の上司のように信頼関係が成り立っている者同士での紹介は話しが早く進みます。
僕の場合は、上司が先に話しをつけて下さり、その後留学先の上司にメールで履歴書 (CV) を送り、後日現地まで行き面接しました。
留学までの流れ
2015年12月 留学決意 上司に留学先を斡旋して頂いた
2016年1月 留学先機関から承諾を得る
2016年3月から10月 助成金申請
2016年8月 留学先の教授と面接するため渡英
2016年12月 助成金採択通知
2017年4月から2019年4月 イギリス留学
ご覧の通り1カ月以内に留学OKをいただけました。
CVとメールのやり取りで許可を頂きましたが、行くところがどんな所か知りたかったので自ら面接を申し込みました。
1回会って話すだけでお互いがどんな人物か把握できるのでお金はかかりましたが良かったなと思っています。
夏休みを利用して行ったので3日間観光もしました。
あとは留学資金と自分自身の意思が大事になります。
留学にはどれくらいの資金が必要?
留学する国の物価によってだいぶ値段に差がありますが、日本より安く生活するのはまず無理です。
日本でかかる月々の生活費で生活しようとすると、かなり生活水準を落とすことになります。
僕が主に滞在しているイギリスロンドンでは日本の生活費の2倍は必要かなと思います。
アメリカになるとそれに保険代や車などが必要になるので2.5-3倍くらいは必要になります。
日本と違って海外の主要都市では物価が年々数%~10%の幅で上昇するのでそれも考える必要があります。
例えば以下に一般的な30代独身の方の1ヵ月の例を日本首都圏とイギリスロンドンで比較してみます。
お昼は外食で朝夕は自炊、プライベートでジムに行ったり月1で飲み会という設定です。
なお生活水準は落とさない場合です(£1=160円)。
日本 | イギリス(円換算) | |
家賃 | 9万円 | £1,200(19.2万円) |
食費日用品 | 4万円 | £500(8万円) |
通信光熱費 | 1.5万円 | £160(2.6万円) |
その他 | 2万円 | £100(1.6万円) |
合計 | 16.5万円 | £1,960(31.4万円) |
日本の生活水準を維持するとやはり2倍は必要になります。
年間で必要となる費用はイギリス留学で最低でも400万は必要になるでしょう。
他人と部屋以外の居住空間を共有するシェアハウスに住む、食事は朝昼晩全部自炊、娯楽はなしと追い込めば生活費は30%くらいカットできます。
ただ、折角の海外生活ですので少しはゆとりのある生活しないと勿体ないと思います。
そう考えると滞在費にあてられる留学助成金は非常に大きな存在です。
留学が決まったら留学助成金を獲得する
留学助成金を得ることは絶対ではありませんが、あった方が間違いなく生活は楽になります。
もし留学助成金を獲得できると、留学中の生活費のために貯めていた資金が自由に使えるようになるわけですからね。
生活が楽になると精神的にもらくになり研究に集中できますし、休みの日には観光もたくさんできます。
特にヨーロッパは各国が近くLCCが沢山飛んでいるので週末の1泊2日の観光が5万円程度で行けることもあります。
僕は月1回ヨーロッパ各国を週末に旅行していました。
その留学の資金源になるものとしては助成金だけではありません。
今日本で所属している機関から援助を貰いながら留学する方法もありますし、完全に自費で行く方法もおあります。
それぞれのメリット デメリットを考えてみましょう。
公的または財団の海外留学助成金
メリット
・金額が大きい
・税金がかからない(一部はかかる)
・助成金獲得自体が業績
懐を傷めずに高額な資金を得られるので精神的に一番安定します。
その一方で
デメリット
・応募が多く超高倍率
・書類作成が大変
・申請ごとに留学先の上司のサインが必要
ポンコツ研究者は審査に通らないと言われています。
書類作成に関しては1つ集中して作成したら後はフォーマットに合わせて修正する感じになります。
テーマが決まっていたら早い段階から落ち着いて作成すると良いですよ。
ざっと国内で申請できる海外留学助成金約30選+眼科専門の留学助成金3選をまとめたので参考にしてください。
海外への研究留学といっても留学先が資金を援助してくれるわけではありません。カナダやアメリカでは国自体研究資金が豊富なので留学先の上司が研究費を持っていたら多少お給料は頂けます。給料といってもよっぽど優秀な研究者でない限り年間[…]
日本の所属機関からの援助
メリット
・安定した給料が入る
・競争倍率が低い
所属機関によって支給される額は様々だと思いますが、基本的には基本給の50-80%は支給されます。
大学教員の給料だと20万から30万くらいは月
尚且つ競争相手は学内に絞られるので、倍率は低く難易度は低め。
むしろ近年では競争はなく上司の許可が下りれば確実に頂けるところもあります。
その一方で
デメリット
・金額はそこまで大きくない
・税金がかかる
・帰国後の縛りがある
・留学中日本からの雑務がある
給料は減額されるので助成金のように多くはもらえません。
ただ留学終了後、必ず元いた所属機関に戻り、数年間勤続しないといけない等の縛
そのため、留学先や他の機関からオファーがあっても断らないとい
僕は日本の職を全て辞して渡英したためこの縛りもなくその後カナダの大学のポスドクになりました。
その時の記事はこちらになります。
日本人が海外でポスドク研究者を康場合、どれだけ給料がもらえて、どんな生活できるのか気になりますよね?今回の記事では、カナ…
だいぶ楽しい人生を送りました。
自己資金
メリット
・日本からの雑務ゼロ
・時間にゆとりがある
一番懐を傷める事になりますが、留学先で無給であれば結構自由
その一方で
デメリット
・資産が大幅に減る
・無職
これができるのは元々お金持ちの貴族か給料の良いお医者様くらいかと
実際に自己資金で留学されている先生と何人かご一緒しましたがお医者様でも辛そうでした。
まぁ当たり前ですよね、収入がなくて資産だけがどんどん減っていくわけですから。
お一方は夫婦でいらしていましたがご実家が極太で優雅な生活をされている先生もいました。
僕は民間の助成金を獲得しましたが、ロンドンは物価が高く結局自分のお金もかなり使いました。
資産が減り続けるというのは精神的に良くないので、自己資金での留学はあまりおすすめしません。
ダメもとでもよいので出せる助成金には応募し続けることをお勧めします。
数打てば1つ当たります(僕は何とかかすって当たりました)。
実家が太い家系の方などはご両親に頼るのもありかもしれません。
留学助成金に申請した時の業績はどれくらいだったか?
なぜ業績の話しをするかというと、留学助成金の審査は書類審査と通過者に対する軽い面接しかないからです。
すなわち実力がありそうかの評価は研究業績が殆どを占めます。
当たり前ですよね、お金を助成するのに全くのド素人に出しても将来性がありませんからね。
因みに僕は運よく補欠で首の皮一枚で採択された身分ですので、これ以上の業績は必要かもしれません。
申請時の業績
First authorの英語論文 12編
Co-authorも含めたTotalの英語論文 25編
First author IF 34.4
Total IF 65.8
眼科はIFが低いので他科や基礎の先生に立ち向かうには数打つしかありません。
因みに眼科系の海外雑誌のIFが気になりましたらこちらを参考にしてください。
6月に毎年恒例のインパクトファクター(Impact Factor: IF) が発表されます。その際インパクトファクター(IF)がついている全分野の雑誌が一気に公開されます。各分野で再度検索する必要があり面倒ですよね。[…]
大学院修了してからはずっと論文を書いていた気がします。
因みに僕が採択された助成金はこちらです。
第一三共生命科学研究振興財団 海外留学奨学研究助成
助成対象研究分野及び助成対象者
- 生命科学特に疾病の予防と治療に関する諸分野の基礎的研究並びに臨床への応用的研究に意欲的に取り組んでいる日本国内在住の若手研究者
- 留学期間は2年以上
- 留学先機関は海外の優れた大学等非営利の研究機関
- 過去に海外留学の経験がなく且つ助成採択後に出国する研究者
- 大型の助成の交付を受けている者は対象外
助成期間
- 2年間
助成件数
- 5件(うち一人は女性優先)
助成金額
- 1件あたり1,500万円(年額750万円を2年間)
応募期間
- 6月~7月
基本的には薬関係の基礎研究が財団の趣旨ですが僕は臨床
当時は2年間で600万円という支給額でしたが今はその倍以上の1,500万円です。
僕は運よくこちらの助成金を頂きまし
補欠審査の時に面接をされた代表の方から頂いた採択の理由は以下の通りでした。
「君の研究は当財団の趣旨とは少し離れているのですが一人だけ業績の数が抜きん出ているんですよね。私はその研究者としての能力を評価しました」
というお言葉を頂き、論文いっぱい書いていて本当に良かったと実感しました。
留学助成金獲得における注意点
留学助成金においてはいくつか注意点があります。
当たり前のことですが、重複獲得と同じ助成金2回獲得には注意してください。
助成金は重複獲得禁止
スーパー研究者ならどれもこれも獲得したら大金持ちじゃん?
と思うかもしれませんが、同期間に重複する助成金の獲得は基本的に禁止さ
そのため、例え3つに採択されてもどれか1つ選び、他の2つは辞
一人でも多くの研究者が留学できるようにするには当たり前ですよ
しかし、助成期間が被っていなかったら別の助成金を獲得すること
例えばAと言う助成金を2017-2019年で獲得し、Bと言う
中には条件を満たしていれば重複獲得可能という助成金もあります。
各助成金の募集要項を隅々まで読んで確認してください。
重複獲得バレないのでは?
多分高確率でバレます。
何故かと言うと、採択者は研究課題名、氏名、所属機関がWeb上
研究留学を希望する人達は、殆どの人が全部の助成金に申請します。
Web上でどういった方々がどういった研究で採択されてい
重複獲得は法的な罰則はありませんが、どの財団のWeb上の禁止
もしそのような事が発覚した場合、それなりの処罰があると思います。
また、以後所属機関からの申請が通りにくくなるなど自分以外
そのため、いくらお金が欲しくても、1つ以上採択されたらどれか
同じ助成金は2回獲得できない
これも当たり前ですよね。
一人でも多くの研究者が海外で経験を積めるようにしなくてはなり
僕が実際に受けた助成は以下の通りです。
2017-2019 イギリス留学 → 第一三共生命科学研究振興財団
2019-2020 カナダポスドク → 現地の給料のみ
2022-2023 イギリス留学 → 北澤克明記念緑内障学研究助成
今回のイギリス留学は色々と年齢制限も重なり申請できるものが少なくて首の皮一枚というところで採択を頂き今無事に生きています。
僕は助成金がなかったらやっていけなかったと思うので本当に感謝しております。
年齢
基本的に年齢制限がどの助成金にも設定されています。
財団によって微妙に異なりますが40歳未満が殆どです。
そうですよね、40-50歳くらいの既に偉くなっている人に投資
20代はよっぽど早熟なやり手か強力な研究室からの申請でない限り評価が難しいかもしれま
研究内容
これも大事ですよね。
キーワードとしては新規性があること、例え無かったとしてもそ
この2点は外せないと思います。
また留学先がどのような研究をしていて、自分がやりたいことと一
何故なら、もし助成金が採択された場合、帰国後に報告書を提出し
申請した内容と報告書の内容が全く異なっていたら大問題ですよね
勿論、何もかもが一致する必要はありません。
あくまでも留学先機関の教授が研究室の運営をしているわけですか
僕も研究内容は概ね同じでしたが、使用機器が変わった等の変
財団の方に確認したところ、minor change なので引き続き研究頑張って下さいとお返事頂きました。
所属機関
これは正直なところどこまで影響するかわかりませんが、審査員も
審査員をするような方々は、一流大学で研究をされていたり
そのため、母校からの申請があった場合、全く氷のような心で申請
ただ、僕はは一流大学ではなく、至って普通の大学から申請し採
さいごに
研究者が留学して日本と違った色々な事を身につけるには最低でも2年はかかると思います。
もし留学を希望されている方は2年を目標に定めて下さい。
可能であれば日本の所属機関を辞めて行く方が今後の成長にはよいかと思います。
籍残して留学すると日本から沢山仕事が飛んできますし、折角留学先でチャンスを頂いても日本に帰るのが決まっていたら勿体ないですしね。
人それぞれ考え方はありますが1つだけ共通するのは「留学を絶対に楽しむこと」です。
留学が決まっている方はこちらの記事を読んで何を持っていったらいいか参考にしてみてください。
初めて海外生活をする場合、必要な物とそうでない物を分けるのは難しいと思います。今回の記事では、イギリスとカナダの2か国で…
また、外国の方喜んだ日本のお土産も参考にして頂けたら嬉しいです!
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KazukunORTPhD、 hirachan_ort_phd、 ハリファックスとロンドンのブログ
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